【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第1章 再会とキスの仕方
車に乗り込んで彼の横顔をみた。
とても綺麗で昔からそういう人だったよなと。
車の外に視線を向け隣に感じるその人の気配に胸が高まった。
車を停めるまで会話は、なかった。
しばらく車を走らせて、辿り着いたのは旧防波堤と自然に囲まれている海浜公園。
人目を気にしてのことなんだろう、とすぐに理解した。
外からは波を打つ音が静かに聞こえる。
「元気だったか?」
当たり障りのない質問に、らしくないねと笑いがこみ上がった。
「零は?」
「元気だったよ」
「それは良かった」
あれからどうしてた?
今は何をしてるの?
どうして安室透と名乗ったの?
どうして私を無視しなかったの?
「警察、辞めたって本当か?」
「……辞めたよ」
「どうして」
どうして。
見たくなかったから。
聞きたくなかったから。
「…同期が、亡くなったことはきっかけだけど。大事な人が、今日死ぬかもしれない、明日死ぬかもしれない。覚悟をしていたつもりだったけど、覚悟できてなくて」
なによりも。
貴方の訃報を、業務の一環で知るなんて想像しただけで耐えられなくて。
「…昔と、変わったな」
「昔は何も知らなかっただけだよ」
きっとこの人は昔と変わらずにこの国のために働いて生きてるんだろう。
小さな溜息に、今の私を軽蔑されたことを察した。
居心地の悪さに耐えきれず、外に視線を向ける。
暗い中、月明かりの反射で光る波打ち際はどこか気持ちを落ち着かせる。
「…それで、本題は?」
「何も」
「何もって、あるでしょ。偽名を名乗って毛利先輩のところに来て……今貴方がどこで何をして働いてるのかは関わりたくないから突っ込まないけど、毛利先輩に迷惑をかけるのは、困る」
「○○が人に話さないことは知っている。…久しぶりに、顔を見て話たくなっただけだ」
「はいはい、嘘つき」
嘘つき。
彼の言葉に本当は無い。
「久しぶりに顔が見れて嬉しかった」
「え?」
その言い方はまるで、見守っていてくれたみたいで。
近づく顔に反応が遅れたのは確かで。
重なった柔らかい唇が、その行為が、キスだと気づいたのは遅れてしまった。
呆然とする私から離れるその顔は、優しい笑みを浮かべていて。
「…零………?」
くしゃ、と前髪を撫でられて視線を下ろした。
何があったのかわからなかった。
理解ができない。
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