【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第1章 再会とキスの仕方
「それではお先に失礼いたします」
「おう、明日もよろしくな」
「はいっ!」
毛利探偵事務所を後にして深呼吸。
忙しい日は助かる。
この人はよく殺人事件に巻き込まれるため良いのか悪いのか運営上大きく赤字になることはなく。
今日の晩御飯はなにを食べようか、帰ったらあのドラマを見ようかななんて考えながらお気に入りのヘッドホンを耳につけた。
「お疲れ様です。○○さん。仕事終わりですか?」
階段を下りた先に今一番会いたくない人が、待ち構えていた。
愛想笑いもできずにヘッドホンをつけているから何も聞こえないふりをしようと軽く会釈。
「そのシリーズのヘッドホン、昔から好きでしたよね」
あっちから言い出すなんて思わなかったから。
足が止まる。
「この後、お時間ありませんか」
優しい声音。
深呼吸をして、ヘッドホンを外す。
「…釘を刺すつもりなら私は貴方のことを誰にも話すつもりはありません」
だから関わらないで。
私の気持ちをかき乱さないで。
「私と貴方は今日初めて出会った」
「ええ、そうですよ」
「私は貴方を知らない」
「はい、『安室透』としては」
近づいてくるその姿に、足が竦む。
そっと頬に触れる優しい指先。
「久しぶり、○○。話がしたいから少しだけ付き合ってくれないか」
その指先に涙がでた。
はい、と小さく言葉にすればその人は優しく笑って近くの駐車場に停めた車の助手席に私を乗せた。
昔、車は男のロマンと言った人がいた。
いつかこういう車がほしいと言った人がいた。
その夢を叶えていることを知った。
そして、その夢の隣に
一瞬でも私は…ここにいることが幸せだと、思ってしまったんだ。
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