• テキストサイズ

【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第1章 再会とキスの仕方


…でも確かに、私はこの人にキスされた。
唇に残る温もりが、それを証明するようで。
涙が溢れた。
私はこの温もりを誰よりも一番に避けていたくせに、誰よりも一番触れたかった温もりだったから。
言葉を必要としなかった。
私はその首に腕を回し、口づけを強請る。
醜くていい。
愚かでいい。
一番欲しかったその温もりが、この瞬間だけでも手に入るなら。

口付けを拒まれると思った。
強請って嫌われて軽蔑されるかと思った。
最初に口付けたのは零なのに、私はこの人に嫌われると思ってしまうんだ。
あの卒業式に拒まれて以来ずっと。

運転席に身を乗り出して、シートに体重をかけるように零に覆いかぶさる。
ふ、と小さく笑う零が私の髪を撫でながら舌先で唇を突く。

忘れられなかった、キスの仕方。

数年ぶりのキスなのに、その仕方を体は覚えていて。
絡み合う熱に浮かされる脳内。
いつのまにか、零が上にいて。
覆い被さっていたはずの私は、運転席に寝かされていて。

「…ぁ………零…?」
「…○○の、キスの仕方…変わってないな」

どっちが、と思った。
息を整えようと顔をそらして。
重要なことは何も話してくれないのに、この熱を求めたくなる体が憎い。
このまま先に進めば私はきっと世間一般で言う都合の良い女なんだろう。

「…零、って…もう呼ばないから……だから、お願い…帰らせて…」

知らぬ間に体が震えていた。
恐怖ではなくて、この人に抱かれたい気持ちが抑えられなくて。
私は今期待していた。
そんな自分に心底軽蔑をする。

「………ごめん」

なんに対しての謝罪なのか、覆い被さっていた熱は離れて私の頭を優しく撫でる。
やめて欲しくない。
もっとほしい。
この人を求める自分の欲が、気持ち悪い。
目を合わせると、優しい笑み向けられて。

「○○」

『○○、別れよう。』
あの時、この人はどんな顔していただろう。
童顔だった彼は今も実年齢より若く見える。
だから、まるであの日をやり直せるような錯覚になりそうで。

「“安室透”の、恋人になってもらえませんか」

まるで
やり直せるような…錯覚に、陥りそうで。

「ごめんなさい」

甘い甘い言葉は、降谷零の恋人にはさせてくれなかった。
だから私は、間違えてはいけない。

「…歩いて帰る…今日は、ありがとう」



/ 687ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp