【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第69章 油断※裏
家に着いて、車が停まる。
赤い車は…目立つから変えて欲しい。
零に見られたら困る。
「沖矢さん、盗聴器外したら帰ってくださいね」
新しく取り付けるのは無しですからね、と何度も伝える。
…そして、リビングで終わるのを待つ私をよそに、赤井さんが手慣れた手つきで盗聴器を外して行った。
その数、合計5個。
「…引く」
「全部壊したので、もう大丈夫ですよ」
「は?…え?沖矢さんがやったんじゃ」
「必要ありませんよ」
じゃあ、誰が。
零が?…いや、零とは前にそんなことあったけど…浮気を心配してまでするなら携帯にGPS入ってる方を疑った方が早い。
「取り付けられたのはつい最近でしょう。その間に、彼のことについて部屋で何か?」
「……言ってない」
「この部屋に彼の身元がわかるもの、何か残っていたりは?」
「昔の写真は別れた時に捨ててるし…零は、そういうのは残したりしない人……待って、それって…」
「おそらく組織でしょうね」
貴女は無防備すぎる、と。
沖矢さんが言い放つ。
…確かに、最近ずっと…“バーボン”としての彼のことを、考えることはなかった。
「定期的に部屋に盗聴器がないか、調べて下さい。彼と、普通に過ごしたいなら」
「…それじゃ、…零の家にだって」
「セーフハウスでしょうから、その辺は彼も考えてるでしょう」
考え無しだったのは、私だけで。
…つまり、零は私に来て良いと言ってくれてたけど……零のいない時間帯に私が零のことをあの部屋で何か話したら…聞かれていたかもしれないということ。
「……盗聴器、これだけ外したら流石に」
「“バーボン”のお気に入りとしてなのか、恋人なのかは分かりませんが組織に貴女の存在は伝わってる。それは逆に、貴女の能力をアピールするチャンスでもありますよ」
…忘れてた。
この人は、私を組織に関わらせたい側の人間。
「私の能力って……」
「彼を好きなこと、ですね」
それは能力とは言わない。
「それが最大の強みで、最大の弱みであるのが貴女です」
その通りだった。
「……ありがとう、ございました」
盗聴器のこと。
私は、その可能性すら考えてなかった。
もしかしたらこれまでも…零がこっそり処分していたかもしれないと思うと情けなくて苦しかった。
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