【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第68章 忍び寄る影
「あははっ…無理、笑う…っ」
こっちは真面目なんだという目でパン屋さんが私を見るけど、その人、国家公務員なんですけど。公安のゼロなんですけど。普段怖い顔して怒る上司なんですけど。
昔から…この人の料理は、人を魅了するのは知っていたけど。
プロさえも魅了するその腕は、私の…私たちの自慢だった。
腹減った、と
「透さん、教えてあげたら?」
「いや、でもそれは安室さんの企業秘密だよ。さすがに教えられるわけが」
「わかってる、わかってるが」
「いいですよ、別に教えても」
「え、そうなの?」
「ええ、○○も言ってますし」
「私は関係ないでしょうが」
ハムサンドの作り方を、実演で教える透さん。
それをカウンターから見る私と少年探偵団。
自慢の彼氏に集まる視線はいっそ気持ちがいいくらいで。
「○○さん、顔にやけすぎ」
「…さぁ。なんのことでしょう」
コナンくんが私を呆れ顔で見て小声で指摘してくる。
サンドイッチを作り終えて、その人は透さんに頭を下げてどうか自分の店でそのサンドイッチを売りたいという。
いいですよ、と答える透さん。
…いつか、このお店から透さんがいなくなったときに彼がいたものが残される。
それを良しとするか否かではあるけれど…少しだけ、嬉しかった。
「できました」
テーブルに移り、サンドイッチを提供する透さん。
ポアロの名前を出すなら一応店長の許可を取ったほうがと正論を述べる梓さんの困ったような顔。
「透さん、私本当にそろそろ」
「そうですね」
せっかくだけど、並べられたサンドイッチには手を付けず立ち上がる。
またね、と探偵団の子たちに手を振って、透さんと一歩お店の外に出たところで彼の携帯が鳴った。
「はい、安室です」
少し待って、と透さんが私の手を掴む。
…ちゃんと見送りたいという意思が伝わって嬉しくて彼の顔を見つめていたら、一瞬で顔つきと声音と変わった。
「ベルモット…っ」
背筋に、緊張が走る。
…私の零に…触れる人。最近はずっと接触することも、私宛に連絡が来ることもないけれど…
「調べてる?なにをです…… ですよね 」
ふっと笑う零の目つきは…私があまり好きではない目つき。
「目を付けられてるって…誰に?」
そうですか、と電話を切る零が…私と目が合って、唇が重なった。
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