【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第68章 忍び寄る影
その人は、私たちにぶつかって…二人の間を走り抜けた。
気に、食わない。
「ふっ、何ですかその顔」
「…私たちの仲割いた」
「割かれてないですよ」
追いかけますよ、と言われて…手を引かれた。引くだけの手はすぐに離れて、私の足を走らせる。
先を走る透さんの背中を追いかける。…追いかけるこの背中が好きだ。
いつだって、私の先を歩く人。
透さんの手が、逃げる男の服を捕まえる…と思ったら、透さんの携帯が鳴る。
「はい」
『安室さん、大事件!!』
走りながら電話に出る透さんは携帯をスピーカーにした…電話の先の声は、梓さんだ。
「はい?」
梓さんの声は、とても慌てていて。透さんは、私の腕を掴んでその足を止めた。
「止まって」
『アイスクリーム買ってきて!』
「アイスクリーム?」
『店長が仕入れ忘れてたのに、クリームソーダの注文とっちゃったの!大至急買ってきて!』
…梓さん、可愛い。かなり焦っている声に、私の肩が揺れる。
逃げる男を追いかけるのは…コナンくんを筆頭に少年探偵団のみんな。
通話の切れた電話を透さんがぽかんと眺めるから、その表情が可愛くて堪えきれずに笑ってしまう。
「何笑ってるんですか」
「だって、梓さんも透さんも可愛いから」
「男に対して可愛い、はあんまりですよ」
頭を撫でられて…小さく笑う。
「それよりいいの?…あの人」
「いいんだよ……任せたよ、名探偵くん」
走り行く小さな背中を、暖かく見送る透さんの目。
「……アイスクリーム、買ってかなきゃね」
「そうですね」
しかし
「「梓さんは可愛いですね」」
声が揃って、顔を見合わせた。
「透さんが言うのはダメ」
ぷい、と子供のようにそっぽを向いていつも買い出しで利用するスーパーへ足を向ける。
「○○のそういうとこ、世界一可愛いですよ?」
「下手な機嫌取りはダメです」
そう言う意味じゃないのは分かってる。
それに、声が揃ったときの…同じ感想を抱いたことの方が、個人的にはすごく嬉しかった。
だから…このヤキモチは、少しの茶番。
「○○の分のアイスも買ってあげますから、許してください」
「私のこと何歳だと思ってるの」
「さぁ?何歳ですかね」
スーパーで業務用のアイスを買って、透さんが宣言通りに私にアイスを渡すから…
二人で歩きながら食べて、ポアロに戻った。
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