【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第60章 緋色の帰還
ブレーキを踏み込もうとしたとき…
前を走る車の屋根が開いて
後部座席に座る赤井秀一が…腕を組みながら、こちらを見ていて…
「赤井…秀一…!!」
思わず、口角が上がっていたことは…恐らく彼にしか気づかれていない。
目が合って安心して…
彼がここにいる。
だから私は…アクセルを踏み込んだ。
本気で捕まえるつもりで。
…違う、この人なら止められるというのがわかっていたからスピードを上げた。
「なんで赤井がここに…!」
「結城さん!降谷さんに連絡してください!!」
声をあげた。
…私は…先ほど決めた覚悟を捨てた。
この場は、公安として…零の部下として、思い切りしても…大丈夫。
結城さんが零に電話をかけて
「降谷さん!赤井が来葉峠に現れました…ッ!」
『…赤井が!?』
スピーカーにしてないのに、携帯から声が聞こえる。
…ごめん、零。
私今…楽しい。
くだらないカーチェイスも、長くは続けてもらえないことくらいわかってる。
見えるはずのない赤井さんのアイコンタクトが、見えた気がして…
左手で銃を向けられた。
私は、本気で追いつくつもりだった。
スピードを上げて、赤井さんの銃の先が…タイヤに向かってるのがわかる。
曲がった先の200mくらいだろうか…少しのストレート道。
曲がり角の手前…そこで…銃は撃たれた。
右の前タイヤが撃たれ、一気にバランスを崩した車に、ブレーキをかける。
ハンドルを切って…頭を思い切り窓ガラスにぶつけ、ガードレールに車両がぶつかりながら…崖に落ちる手前で、車が停まった。
「痛ぁ…っ…ぶつけた…」
「…二人とも無事か…っ」
「あぁ…なんとか」
三人の無事をお互いに確かめ合い、後ろを振り返ると…
こちらの車に巻き込まれて、走行不能の状態だった。
これらも全て計算だったんだろうと思うと…お見事、としか言えなくて。
頭から熱い何かが垂れていることに気づいたのは瞬きをした右目の視界が赤くなったから。
「○苗字○さん、切れてる!」
窓ガラスに頭をぶつけた時に…どうやら窓にヒビが入って、右眉の上をカケラで少し深めに切ったようだった。
「…あー、……もう少しで追いついたのに」
助手席の清水さんが、ハンカチで抑えてくれて…
結城さんは、零と話してる。
…成功した。
その達成感に、喜んでしまいそうだった。
→