【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第58章 最後のパーツ
職員室から駆け出して向かう三人の後を追うように透さんが走る。
私が着いて行くことを疑ってないとわかるのは、一度も振り返っていない透さんが車に乗り込む際に助手席を先に開けたから。
「…ベンツ」
「車は国産車が良いですよ」
ジョディさんの車を追うように走り出す。
「透さんの車が、好きだよ」
「珍しいですね…○○が車に興味持たれるなんて」
スピードあげますよ、と言ってアクセルを踏み込み…前を走るベンツを追う。
「今度、見に行きますか?車」
次の約束が…泣きそうに、なる。
「○○も車に興味持ってくだされば、もっと楽しいでしょうね」
ベルモットさんが聞いてるかもしれないのに。
どうしてそんなに甘いことを言うの?
それとも…そうやって手懐けているというアピール?
……この後の行動を私には、サポートすることも、邪魔をすることもできるわけがなく。
「何もできないけど…隣にいても、良いですか」
「…えぇ」
何かあった時に、沖矢さんへ知らせるために私は…可能な限り情報を得たい。
空気に合わない透さんの笑顔が…もっと見たいと思った。
病院に着いて、車から降りる。
「何しに来た?もう用はないだろ?」
「一応、彼女が僕らのクライアントなんでね…それに、君ならうっかり口を…滑らせてくれそうだから…」
「あん?」
透さんの先に立ちふさがるように立つのは、FBIのキャメルさん。
「楠田陸道という男を知ってますか」
「“楠田陸道”?知らないな、そんな奴…」
お互いを探るように警戒するような話ぶりに、見ている側としては…緊張感が走る。
「ここの病院の入院患者で…ここの近くに車を乗り降りて姿を消した男ですよ…なんでも拳銃がからんでいるとか…お仲間から聞いてませんか?」
「さぁね…」
「あぁそうか…君のような下っ端捜査官には…降りて来ない情報っていうわけですね?」
馬鹿にするように透さんが口角を上げる。
「何言ってだ…我々は綱に情報を共有して…」
「キャメル!!もォ!何やってんの!?私から離れないでよ…」
病院の自動ドアが開いて…ジョディさんが走って戻ってきた。
ジョディさんに腕を引かれてキャメルさんは病院内へ。
盛大な舌打ちをした透さんを横に、車に戻れば…
透さんは肩を揺らして、うまく行きましたね、と笑いかけてきた。
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