【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第57章 緋色の序章
一週間が過ぎ、澁谷さんの身辺警護と言って夜は彼女の帰る時間を見計らって遠くから見守った。
透さんが予定で行けない日は、私が。
その予定の内容が公安ではない日は…おそらくベルモットさんと。
……詳細は教えてもらえなかったけど。
澁谷さんの携帯からジョディという女性に連絡をいれるのも、そんなに難しいことじゃなくて。
送信した覚えのないメールも、送信ボックスにあれば自分が送ったんだなという認識になる。
その後の予定を聞き出すのは、警護の予定合わせの確認。
女同士だからなのか、澁谷さんはとても懐きやすくて…優しく温かい人だった。
その日はジョディという人と飲みに行く約束をしていることを知っていたから…私は自宅待機。
毎日の報告は、すべて電話で。
バーボンとして、甘い言葉を囁くその声は…中毒性が高い。
『ご苦労様です』
「透さん…会いたい、です」
『…○○、次に会ったらご褒美を差し上げますよ』
「ご褒美…?」
会いたいと言えば何度も、そう言われて。
会ってくれない。
ご褒美は零に会えるだけで良いのに。
『…それとも、電話越しでシますか?』
『相変わらず楽しそうな遊びをしてるわね』
「っ…ベルモット、さん」
『○○、ではまた連絡します』
車に乗り込む音とベルモットさんの声がして電話が切れる。
やだなぁ…
「…遊びじゃない」
ベルモットさんは、バーボンのお気に入りの私の存在を楽しんでる。
相変わらず会ってはいないけど、こうしてバーボンと話す時にベルモットさんの声が聞こえることが最近は多い。
…あの日、イかせてもらえなかった日からずっと…シてないんだよって零に言いたい。
その人とはスるの?
…零…やだ、よ。
私以外を求めないで。
触れないで。
ベッドの中で体を丸めて、高まる熱を堪えた。
…バーボンが言う、ご褒美が欲しくて。
「零に会いたい…」
それどころじゃない。
私に構ってる時間はないし、零がいま…何をしているのか、分かってるはずなのに。
零は本当に私の扱いが上手い。
…こんなに零のことだけ考えさせれば、零を不安にさせるようなことをしない。
声は毎日聞けてるし…
足りないと言う方がわがままで。
……私は、零に真相に近づいて欲しくないんだなって…改めて思った。
その願いは叶うことはなかったけれど。
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