【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第56章 素直じゃない
「いつも本当にごめんなさい!!」
蘭さんがパジャマ姿で頭を下げてきて。
透さんが運ぼうとするのを遮って、私が代わる。蘭さんと二人で先輩を抱えて布団まで運び、寝かせた。
「遅くまで付き合わせたの私なので…先輩のこと、叱らないでくださいね」
「本当にごめんなさい…」
謝るのは、私のほうだ。
…透さんは玄関先で待たせたのは、コナンくんのことを考えたから。
こんな時間に透さんが来たら今の状況上、落ち着いていられないだろうし。
…そういえば私のことも探っていると言っていたかな。
「…すみません、先輩」
量を間違えるということはないだろうし、明日には普通に起きるだろう。
…ただ、それでも…先輩が気を使って誘ってくれたのに、こんな風に先輩との話を終わらせてしまったことが申し訳なかった。
透さんは階段下で立っていて、待たせていたはずのタクシーの姿はそこになかった。
遅かったので帰っていただきました、と言われればそれもそうだよねと透さんに抱き着いた。
今日ずっと、零として触れていない。
それが…寂しい。
「…帰りましょうか、○○」
何事も無かったような笑顔で手を繋がれて、透さんの温もりを感じる。
…どうして透さんでいるんだろう。
「…さっき本当に盛ったの」
「微量ですよ。明日には普通に目覚めます」
「どうして」
「そんなに怖い顔されないでください」
かわいい顔が台無しですよ、と囁く甘くて低い声。
透さんじゃ、ないことに気づいて。
どうして演じるの。
どうして零じゃないの。
「○○の家に行きたいです」
色気が、あまりにも…凄くて。
拒否権を与えられない。
流される以外の選択肢がなかった。
部屋に入って婚約指輪に触れようとすればその手を遮られた。
あくまで、零としては触れないということなのか、壁に背中を押し付けられて口づけて…キスをしながらベッドに運ばれた。
お仕置きだと囁く声も。
何がだめなのかわからないまま流される。
耳をいつも以上に舐められて…首筋へ下りていく舌。
脳裏でどこか冷静な自分が笑って…“降谷零”じゃないのにまた流されるんだね、と言った気がした。
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