【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第55章 都合の良い存在※裏
「手、止まってますよ」
「うわっ」
「なに情けない声出してるんですか、処理スピードあげてください。帰れませんよ」
「ブラック企業めっ」
風見さんに圧をかけられて、仕上げた書類を持っていけば、もうどこかに行く用意。
「まだ、貴女を外に出すわけには行かないんですよ」
「…いや、表情(カオ)読むのやめてもらっていいですか」
「 表情(カオ)に出すのやめていただけますか」
ぐっ、と言葉を失った。
…言われていることは理解する。
「甘えが拭えない限りは、現場に出るのは反対しますよ。個人的には」
その通りすぎて、何も言えなかった。
…遊びじゃない、それは理解しているはずだった。
当然だ。
だけど、私の一番はいつでも降谷零で。
この人たちの一番はこの国とこの国の平和で。
噛み合うはずがなかった。
分かってた。
分かっているつもりだったけど…何も分かってなかった。
零のそばにいたい、それだけなんだ…私は。
風見さんが間違っていないし、厳しいことを言われたとは思っていない。
それがあまりにも図星すぎて情けなくなっただけなのだ…
悔しくて情けなくて。
言葉にならない感情には蓋をして、休憩をとることも忘れて仕事に専念した。
時間を忘れて仕事をする癖を直せと、何度も言われていたのに。
キリがいいところを見つけたのは、23時を過ぎた頃。
たかが事務作業でここまでよく残業できますね、と小さく自分の作業を嘆いた。
携帯に何度かの着信が来ていることに気づけば、サイレントにしていたため気づかず。
業務上の内容ならデスクの電話が鳴ることを知っているから放置しがちになる。
一時間前に零から『まだ仕事か?』という質問。
『今から帰ります』と返せば、すぐ着信がきた。
「はい」
『素直に出ましたね』
ハメられた気分だった。
沖矢さんの声。
「…電話、気軽にかけないでほしいです」
『出なければいい話ですよ』
「切りますよ」
『切れるものならどうぞ』
……つまりは、私に伝えるべきことがある、ということか。
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