【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第54章 あの日を思い出して※裏
さて、と隣に座られて。
「隠し事は?」
「…してない、です」
「他の男と飲んだのは?」
「誤解です、むしろあの二人逃げたの納得してないです」
連行されたの私だし。
降谷さんに怒られるって気を遣ったし。
ナンパとかよくわかんないこと言ってたのも二人だし。
「………少しだけ、零って呼んでも良いですか」
話すには…降谷さんじゃなくて、零が良い。
「風見も帰らせた。…俺たちも今日は帰るぞ」
「でも、仕事…」
「あいつらが期日すぎるものを置いてると思うか?」
「…そんなこと、思ってないけど」
「それに、急ぎがないならさっきの話が優先だ」
お前を疑いたくないと付け加えられたら…拒否権なんてなかった。
零の車に乗り込んで、キスをしようとすると…どこだと思ってる、と叱られてキス未遂。
どこだと、と言われても…零、所構わずスるときスるじゃんと思いながら零の服をつかんだ。
「…零、…勝手に話しても…良い?」
「…さっきの話か?」
「疑われるのは、やだ」
大丈夫、と頭を撫でられて。
「…嫉妬したけど、疑ってはいないから。あの二人相手なんだよな?」
「うん…」
でも、あの日を思い出すのは…苦しい。
零の、苦しい声。悲しく…辛い声。
「…泣く、ことか?おい…」
思い出したら、泣けてきて。
零に向けられた冷たい目も…声も、あの時抱かれた感覚も…忘れられるわけなかった。
「…っ、…零…っ…ごめんなさい…っ」
思い出したら、謝ることしかできなかった。
零に会いたくて零が大好きで…
「…泣くことか?」
車が停まって、ここがどこかはわからない。
下を向いて…涙が止まらない私の顔を、覗き込む。
「○○?悪かった…意地悪がすぎたよな?」
まるで子供をあやすような言い方に、首を振り、泣きながら笑ってしまう。
「…別れて…零の家の近くに…行ったこと、あるでしょ?」
「あぁ…」
「その前に、結城さんと清水さんとお酒飲んで…零が好きって話をしたら…すごく、零に会いたかったの」
だから、あの日。
無自覚に零の家に向かった。
話が飛んで分からない、と笑う零に…あの日、偶然二人に会ったこと。
清水さんと結城さんに捕まって、薄っすらと事情を話したこと。
零の機嫌が最高に悪いことを聞いたことを話した。
泣きながら話す私の言葉をゆっくり待つように零は相槌を打った。
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