【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第47章 貴方のことしか考えられない
「……あ」
「どうかされました?」
病院の入り口から青ざめた顔で走ってくる男の人。
その顔には、見覚えがあって零に視線を向けるように目で指せば。
「先輩、どうかされたのかな」
「……行きますか」
あの子もいるでしょうし、と零が小さく言って。
“あの子”がコナンくんだということはわかったけど……
「安室さん、…私たち一緒に」
「いていいんじゃないですか、本当に偶然ですから。ここに来たタイミングは」
先ほどまで一緒にいて離れて動いたほうがコナンくんが探った時に厄介だという判断。
それもそうかと納得して…
「…あのっ…今日の夜、空いてますか」
「………それは、どの立場としての言葉ですか?」
「っ……そんな聞き方…」
バーボン
降谷零
安室透
「どの立場なら…空けてもらえますか…?」
「……仕事なら、ですね」
プライベートでは会いたくもないというわけか、と納得して。
「…では、ウイスキー飲みませんか」
「…了解です」
降谷零の仕事相手として用意できるだけの情報はない。
…だけど、バーボンなら。
ベルモットさんのことも含めたら、少しでも…話せるんじゃないだろうかって。
ひとまず受け入れてくれた零に安心して、先輩が走っていた先に向かった。
両ポケットに手を入れる零。
エスカレーターを先に歩く零の背中に、手繋げないじゃんとぼんやり思って。
……あ、だめだ。泣きそう。
「安室さん、お手洗い行くので先に行っててください」
「え?ええ、分かりました」
トイレに小走りに向かえば、声を堪えて泣いた。
…ダメだ、触れたい。
どんな理由でも良い。
零に…触れたい。
…トイレから出れば、看護師と話して笑う零の姿にまた胸が締め付けられる。
「安室さん、お待たせ」
「○○…では、ありがとうございます」
優しい笑顔を看護師に向けて…
「…○○?」
「………あ、っ…」
「…………○○、しっかりできないのでしたら帰ってもらえますか?」
足手まといはいりません、と言われて…
その通りなんだけど
「どうされますか」
ここで、帰ったらきっと…
私は二度と零の役に立てない。
零の腕を掴んで…自販機の死角で抱きついた。
「…○○…?」
「……ごめんなさい…ごめんなさいっ…」
繰り返す謝罪とは反して、零に口付けた。
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