• テキストサイズ

【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第41章 貴方じゃないのに。※裏


『久しぶりですね、お会いするの』
「恋人の逢瀬みたいに言うのやめてください」
『でも実際、貴女は彼ではなく私に助けを求めた…』
「…訳は説明しますから…早く」

助けに来て。

『はい』

電話は繋がっていて。
無言が嫌で、何か話してとせがむ。
…最近上手くできた料理の話をされて、微笑ましくなった。
階段を降りる音が近づいて…沖矢さんが扉を開けて。

「お待たせいたしました」

顔を見た途端、泣いてしまった。
抱き着いて自分が嫌だと繰り返した。
零に抱かれる資格は、もう…私にはない。
今すぐ…昨日に戻りたい。



泣きじゃくる私に、持ってきた服を着せて。
抱きしめてくれるその腕が、落ち着かせてくれた。
…沖矢さんは、なぜかとても安心をくれる人で。
どんなに汚れても、どんなに傷ついても…
零には見せられない姿を、見せても良い人だって。
私の中で思ってしまった存在で。

「場所、移動しなくて大丈夫ですか」
「…する」
「家まで送りますよ」
「帰りたくない…いま、会いたくない…会えない」

携帯も開きたくない。
会いたくない。

「…どうされたんですか、本当に」

言いたくない。
口にして認めたくない。
でも、吐き出さないとこのまま抱えているには嫌すぎる。

「……赤井秀一は…どういう人なんですか…」
「なぜ?」
「…私には、…沖矢さんから聞いていた人と同一人物だって思えない…」

ヒロくんを救おうとした存在と。

「彼の性格がわかるようなことを話したつもりはなかったんですが」

悪い気はしませんね、と小さく笑われて。

「…真面目な話をしているんですけど」
「いえ、…貴女になら教えてもいいかもしれませんね」

教えませんが、と重ねて言われて意図が見えない。
抱きしめられている腕が力強くて。
…安心する。

「キス、されますか?」

何故確認をするのだろうか。
…人の話には答えないくせに。

場所を変えたいと思っていたのに。
カビ臭いその部屋で。
言葉にはせずに目を瞑る。
重なる唇は、私の気持ちを穏やかにさせる。

…この感情の名前を、私は知らない。




/ 687ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp