【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第38章 募る想い※裏
探偵事務所の出勤の日。
その日、窓越しに見かけた透さんがいて。
…嬉しくなった。
降谷零としてではなくても、零と触れ合える。
透さんとその恋人としてなら、甘い会話を交わしても…大丈夫なのだと。
「…○○、朝からずっとニヤけすぎだ」
「……すみませーん」
最近会っていなかったのか、と訊かれればそんなことはないと返して…そう、触れ合っていないだけ。
先日顔は見れたし、それだけでも幸せだったけど。
そしてどういうわけか、こんな日だけ依頼の電話対応や先輩の報告書漏れなどがあって…やけに忙しくて。
お昼にポアロに行こうと思っていたのに。
落ち着いたのはお昼はとっくに過ぎて。
コナンくんたちの下校時刻だな、とぼんやり思ってため息を吐いた。
「休憩なしだったし今日はこのまま上がれ」
「え?…いや、でも」
「そんな顔でいられても邪魔だ」
早く会いたいんだろ、と笑われて。
「…ありがとうございます」
いつだって先輩に甘やかされているなって思って。
「あ、先輩。報告書作るの苦手なのはわかってますから、自分がするので忘れないでくださいね」
「…はい、すんませーん」
蘭に似てきた、と先輩にまた言われてはそんなことはないと笑って。
お腹すいたな、と思いながらポアロに向かえば、お店の前で猫がいて。
…確か、大尉。
「あら、大尉!今日は遅かったわねぇ…」
「梓さん、こんにちは」
「○○さん、こんにちは!」
猫に話しかけてミルクをあげていた梓さんに声をかけて。
「透さん、いますか?」
「いますよ、いまキッチンに…あれ?大尉、なんだろ」
梓さんは大尉の首輪に挟まっている用紙を取って…
「タクシーのレシート?」
「…なんで猫の首輪に?」
梓さんが手にもつレシートを覗き込む。
…不自然に文字が消えているレシート。
「…それ、ちょっと見せてもらえますか?」
「さすが探偵さんの彼女さんですね」
「いやいや、それをいうなら先輩の部下だって言ってくださいよ」
レシートを私に渡そうとして。
カラン、とお店の扉が開き…
「梓さん!マスターが呼んでますよ!」
透さんの声に、しっかり受け取ることができず…レシートが風に舞う。
「「あっ…」」
私と梓さんの声が重なり、飛んでいくレシートを見送った。
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