【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第38章 募る想い※裏
「時間を忘れる癖、注意しろって言ったよな」
あたりは暗くなっていて、別室で作業をしていた私はフロアに誰も残っていないことに気づいていなかった。
…そういえばお疲れ様と声を何人かきいた気がする。
「れ…降谷さん、お疲れ様です」
「…そんなに仕事溜まっていたのか?」
「あ、いえ…整理したら見やすいかなと思ってデータ触っていたら止まらなくなってしまった感じです…あ、勝手にやってることなので残業代とかは全く求めないのでご安心を」
家に帰っても零がいなければなにもすることはない。
ここ数日のトレーニングも、零と会えることがなかったから。
久しぶりに彼の顔を見た気がする。
触れたい。
二人の視線がぶつかって、お互いにそう思っていることが伝わって…恥ずかしくなった。
勤務中だから堪えるのは当然だし、でもフロアに誰もいないのもわかっている。
…少しだけ、と思ってしまう気持ちに無理矢理蓋をした。
「降谷さんこそ、どうしてこちらに?」
「…ああ、ちょっとな」
零は相変わらず組織についてのことになると私に話さない。
職場の人間としても、恋人としても。
関わってほしくないというのは切実に伝わる。
…まあ、他の方も私がどのような目に遭ったか知っている人もいるというし。
「私、そろそろ帰りますね」
「…ああ、お疲れ」
これ以上一緒にいると触れたくなる。
「…あの」
ただ、これだけは聞いておきたい。
「次、いつ…帰ってきてくれますか」
「…………見込みが見えたら連絡する」
今は見込みが見えない、ということかと分かれば落胆した。
組織の任務中は、零の家には行けないし。
近いのに、触れられない。
…触れたら我慢できなくなる。
「お疲れ、気を付けて帰ろよ」
「子供じゃないんですから」
でもありがとうございます、と言って…フロアから出れば逃げるように小走りになった。
触れたい。
貴方は私のだって…
……でも
「会えてよかった」
顔が見れただけでも、充電できたような気持ちで幸せを感じた。
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