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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第22章 与えられる優しさ※裏


どうしてだろう。
冷たい空気なのに、零の手はずっと私を握っていた。
…怖かったのは、私だけじゃなかったのが伝わって。
わかっているのに、わかっていない。…零がどれだけ、苦しかったのか。
それなのに…私は彼に本当のことを言わないのか、自分自身でもわからなかった。

自宅に戻る私を家の中まで送り届けて、何も言わずに抱きしめて離れる零は…傷ついた表情をしていた。

扉が閉まり一人になると、体が震えているのがわかった。
ああ、…私は、バカだ。
一人になりたくなかったことに気づいて、笑ってしまう。

先ほどまで体自体になにも不都合はなかったのに…震えとともに、玄関で嘔吐した。
思い出すのは意識が遠のきながらも、口に吐出しされた男の味。
零の温もりだけを思い出したいのに…考えていたいのに、男に慰みモノにされている見苦しい姿をコナンくんと沖矢さんに見せてしまったことへの醜怪な気持ち。
自分から一人になったくせに、助けて、と求める気持ちが苦しかった。
胃液さえも吐きつくして、玄関も服も汚物まみれになっていて情けなくなった。
震える体を叩いて、立ち上がり玄関を片付けてシャワーを浴びる。
これ以上誰かに迷惑も心配もかけるわけにはいかない。
せめて、…何も知らない毛利先輩に会えば気分が変わる、そう信じて。

いつもよりお洒落をしたのも、香水を強めに付けたのも、全部隠したかったから。
これから仕事だと言い聞かせれば体は何とか動くようになった。

マンションを出れば 日差しがまぶしかった。
クラクションが鳴らされて、振り返る。

「おはようございます、○○」
「…れ、い」
「“透”です」

RX-7の窓から顔をのぞかせて、笑顔を向けてくれる彼に…泣きそうになる。

「おはようございます、透さん」
「体調いかがですか?いつもよりお洒落されて」
「…朝から、珍しいですね」

…どうして、傍にいようとしてくれるのだろう。
どうして…

「○○の顔が見たかった、じゃ駄目ですか?」
「っ…ず、るいよ」
「…どうされました?」

車から降りて、近づいてくる零から逃げるように、一歩、一歩と後ろへ足が下がる。



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