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大空に浮かぶ月を眺めながらいつも私は想いを馳せる。

第1章 七年前のあの日から。


私の切羽詰まった声に素早く反応した男性は、残り切っていないコードを探す。すると後ろ側の奥にまだコードがあったのだ、流石に後ろの奥にまで目が回らなかったのか身体が硬直していた。やはりかと妙に納得出来る。未だバグウイルスを入れて時間をずらしている私は、前世の時に良く白蘭のイタズラで弄ばれていたものだ。仕事の邪魔ばかりを起こして非常に腹立たしいことこの上なかったが、今思うとそのお遊びのおかげでそういうトラップがあるのは想像出来た。あの巫山戯た「びゃくらーん!」と言う二頭身の白蘭を何度も見て、何度も大事なデータが入った画面を叩き割ろうと思ったか分からない。入江やジャンニーニに全力で止められた記憶が懐かしい。

「これはっ…」
「なに、どうしたのよ?」
「どちらを切ればいいのか、分からないんだ」
「はぁ!?えっ、どういうこと!?」
「赤、青のコードが残っている…」
「なるほど、ブービートラップね…犯人も中々やるわ。まだ動いていない?」
「あ、あぁ…後30秒の所で止まっているな」
「了解、いける。私が直ぐにどちらかの色を言うから君はそこで切る準備をしていて、なんだったら今すぐ携帯で他の爆発物処理班を避難させる!急いで!」
「わ、分かった!」

全く。犯人も中々やるわ…でも。家の白蘭に比べたらまだまだ甘ちゃんだわ。彼ならもっとえげつない事を平気で行えるもの、だからこそ。私は死なないし、目の前で電話をかけるこの男性も死なせない。

さぁ…爆弾犯さん。ネットワーク関係で引けを取らないと白蘭に褒められた私が貴方と直々に勝負をしてあげるわ。覚悟しなさい?逃げる準備は出来たかしら?

「時間が動き出した!他の者には避難するよう伝えたぞ!アンタも逃げろ!」
「私が逃げた所で、貴方はどうするの。貴方が逃げないなら私は逃げないし、絶対に諦めない!こんな所で死んでたまるか!」

パチンッとエンターキーを押す。すると見取り図が目の前に飛び込んで来た。残り時間が10秒を切ったと声が聞こえる。ずらりと並ぶ数字と文字を見下ろして、私は男性を見て声を出した。

「黒!黒よ!黒を切って!」
「はぁ!黒!?」

赤や青でもなく黒と書かれた最後の文字に軽く目眩がした。犯人だから黒?喧嘩売ってんのか。そうキーボードを叩きそうになったがなんとか抑える。そして残り時間が後僅かと言う所でパチンとコードを切った音が響いた。
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