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大空に浮かぶ月を眺めながらいつも私は想いを馳せる。

第1章 七年前のあの日から。


1秒、0秒とチカチカ赤く点滅し暫く経つと電源が落ちた。どっと冷や汗が流れる。危なかった、良くあの土壇場で黒のコードを切れたと男性には関心しか起こらない。男性もベタつく前髪をかきあげて座り込んでしまっていた。タバコを吸っていいか私のほうを確認する。

「お好きにどうぞ。私はいらないわ…吸わないしね」
「そう、うん…えっと。ありがとうございました」
「いいえ、どう致しまして。君もこれからは防護服着ようね?命がけの仕事なんだから、舐めちゃ駄目よ?いいわね?」
「あ、はい…あ、あの!俺、萩原研二って言います」
「萩原くんね、宜しく…」

パソコンのデータをそのまま警察本部に転送し、ここで使ったデータを全て消去する。後は優秀な捜査一課が犯人を突き止めてくれることを信じている。そう疲れた身体を休めるように軽く背伸びをして、爆弾に近付くと見下ろした。

「それにしても、良くあの短時間で黒のコードを見つけられたね?」
「最初にあったブービートラップかと思って残してあったのを思い出したんだ…流石にどちらでもなかったのは驚いたけど」
「流石は爆発物処理班のエースくんだ…優秀だとは別の課から聞いていたけどその通りだったわね」

偉いぞ、良くやった!そう微笑みくしゃくしゃと少し乱暴に頭を撫でれば、驚いたように目を見開く男性…改めて萩原研二くんのサラサラとした頭を撫で続ける。満足するようにそっと頭から手を離す私に、目の前に座り込む萩原くんは私の手首を掴んだ。甘えたな大型犬のようだと瞬きする。

「あ、や…そのっ…も、もぅ少し…撫でて、貰えませんか?」

この青年、可愛すぎか。照れているのが分かるくらいじわじわと真っ赤になる顔を俯かせているが、耳まで真っ赤なのは隠せられずにいる。すみません、なんでもないと私に謝る姿さえもなんというか愛おしいというのか母性本能をくすぐられるのか。

年齢は余り変わらないだろうが、前世の記憶を入れると私は既に60代である。甘えて来る孫をもつおばあちゃんの気分だろうか…きゅんきゅん来るが恋愛に結びつけるのは難しかったりした。

くしゃくしゃ、くしゃくしゃ…そうサラサラの黒髪がボサボサになるくらいに戯れる、まるで大型犬に触れ合う飼い主のように撫でれば照れくさそうに笑っていた。褒められ慣れていないのだろうか…当たり前過ぎると褒める人も少なくなるし、難しい世の中である。
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