大空に浮かぶ月を眺めながらいつも私は想いを馳せる。
第1章 七年前のあの日から。
だからなのか爆発物処理班のエースと呼ばれて解体出来るのも当たり前だと思い、褒めることもせず、ましてや防護服を着ずにそのまま現場へ来たとしても叱ることもしない萩原くんの上司に呆れてしまう。沢山の上司と顔が効く私は、気持ちが緩過ぎると後々説明をしないといけないなと思った。
爆発物を処理して、私はお先に高層ビルのエレベーターを使用した。一応今回の爆発物に加わった刑事だからか、詳しく署のほうで説明しないといけないようだ。それより犯人の居場所を特定したんだから見付けて欲しいと願うばかりである。高層ビルの正門を出て行けば、沢山の報道陣に囲まれそうになるは、警察官に身元を保護されるように見せ掛けてもみくちゃにされるわと中々に忙しかった。その時私の腕を掴み強引にそちらへ視線を向けさせた男性がいた。黒髪の天パにサングラスの長身の警察官だろう男性だった。かなりじっくり見下ろされていたりする、なんていうか気まづい…私こんなイケメンの知り合いとかいたかしら?そう私もついつい見つめ返してしまった。自覚してはいるが、私は前世のお母さん…若い頃の沢田奈々と綱吉を足して二で割ったようにそっくりだったりする。自分自身がかなり美人だというのはしっかり理解しているつもりだ。
「あの…手を、離して貰えますか?」
「っ、あ、あぁ…悪いな」
するりと腕から手を離した男性に、私になにかご用でも?と微笑んだ。すると思い出したかのように高層ビルを指差す、爆発物はどうなったかという切羽詰まった声での質問だった。
「それの資料のデータは既に本部へ移送したわよ。爆発物は萩原くん…あぁ。爆発物処理班のエースくんとその仲間達が一緒に回収中。心配しなくても生きてるわよ、彼」
「アンタ…一体」
「多分どうせ、時間が迫っていたから死ぬ想いで最後に親友であった貴方に連絡したのね…怖がらせてごめんなさい。私としてはそんなつもりで連絡しろといった訳じゃないんだけど。まぁ…私共々疲労困憊だし、私も防護服着ていない時の萩原くんに呆れてしまって流石に切れて怒鳴ったりはしたから余り手酷く怒らないであげてよ」
「いや、そうじゃねぇだろ!アンタ、本当に何者なんだ?」
「澤田綱海、刑事さ…それじゃあ失礼するわ。またね?もう一人の爆発物処理班のエースくん?」
「ま、待て…俺は松田陣平だ」
「そう、それじゃあまたね松田くん?」