第1章 キスだけじゃ、我慢できない
おっと、楓の前だ。俺は平静を装う。
「あ、バニー。飲む?これ」
「何ですか?」
「焼酎」
「ショーチュー?」
「オリエンタルタウンの酒。飲んでみるか?」
「これね、おばあちゃんが持たせてくれたの。お父さんが好きなヤツなんだよ」
「じゃあ、少し頂きます」
「なんか楽しいね!グラス持ってくる!」
駆けていく楓の後ろ姿を、バニーと二人で見つめる。
「お前のおかげだな。こんな楽しそうな楓、見ることができたの。ありがとな」
「いえ、僕の方こそ、楽しんでますよ」
そっと指を絡めて、バニーが言ってきた。
「お、おォ。そうかッ……」
「はい」
少しの間、見つめあっていると
台所からパタパタと駆けてくる足音が聞こえた。
こちらに向かってくる足音を聞いて、どちらともなく、パッと目線と指を離す……
「はい!これバーナビーのグラス!もうお腹空いた~美味しそう!早く皆で食べよう!」
「そうですね」
「おォー早く食おう!あッ!マヨネーズ……」
「ダメですよ!」
「そうだよっ!失礼だよ~ね~っ」
「そ、そうかァ?……」
な、何かこの二人、似てないか……!?
まぁ、それでもバニーと楓の作った料理は、なかなかで
三人でワイワイ言いながら食べていると、少し遅い時間になってしまった。
「おい、楓。お前、風呂入ってこい。もう遅い」
「えーまだいいでしょ~?」
「だめー子供は寝る時間だー」
「もうっ!」
俺に言われて仕方なく席を立ち風呂場に向かおうとした楓は、ふと振り返り
「あ!バーナビー」
「何ですか?」
「まだ、帰らないでね」
「え?」
「もう少しだけ、皆でいたいから」
「わかりました。楓ちゃんが寝る時間まで、いますよ」
「ほんと?ありがとう!」
足音さえも嬉しそうな楓が、風呂場へ行った。