第1章 キスだけじゃ、我慢できない
……俺ん家の台所で、器用に次から次へと料理を仕上げて行くバニー。
その横で楓が嬉しそうに手伝っている。
それを、リビングのカウチに座り、楓がばあちゃんに持たされた焼酎を飲みながら見ている俺。
ふと、ずっと飾ってある、亡くなった妻の友恵とまだ産まれたばかりの楓、そして俺が写った写真をチラリと見た。
なんだか、妙な気分になった……
台所から声がかかった。
「もーお父さんも手伝ってよー!バーナビーすごく沢山作ってくれたんだよー?」
「おッ!じゃあ、お父さんもチャーハン……」
「いらない。ほら、テーブルに運んで!」
「はいはい」
楓もバニーも……
なんか張り切ってるな……
「お父さんっ!バーナビーってすごいねー!ヒーローとしても凄いけど、料理作らせても凄いよー!」
「……あれ?そー言えば……バニーって、料理できたっけ……?」
ふと俺の口から疑問が出てきた。
何故か少しの間が開き、バニーが俺の目を見ずに言った。
「……僕にできない事があるとでも?」
その言い方は、確かにいつもの言い方だ。
けどな、俺だって解るんだよなァ
お前の事。
俺は黙って、わざとバニーと目を合わせてやった。
すると、バニーのヤツ……
合わせた目をパッともう一度逸らして、一言
「……しましたよ、練習……」
ボソっと、呟いた。
いや、待て。
それ、ちょっと…………その発言……
ヤバい……ん、じゃない……ですかッ?
思わず、二人とも違う方を向く。
きっと俺も、バニーも、、、
顔が赤いハズだ。
お互いに照れていると、後ろから声がかかった。
「お父さんは、もっと頑張って」
「……言われてますよ。虎徹さん」
「……はいはい」
照れてた俺は、そう返事をするのがやっとだった。