第21章 背徳のシナリオ ~前編~
「ちょ……ん……」
そう簡単には離れない。
だってしっかりと腰も抱いて、頭も押さえている。
だけど
ドンッ!!!
想像の斜め上を行くさんの力は思っていたよりも強く、アルコールの入った僕は簡単に突き飛ばされて床に座り込んだ。
「ふざけ過ぎだよ?」
少し怒っているのか……でも、軽く笑いながら……
冗談で終わらせようとしているのがわかる。
だけど……
「女性にリップスティックを贈る意味、知らなかったんですか?」
僕は座ったまま、さんに問いかけた。
「さぁ?意味なんてあるの?
ま、もう帰るから。また、明日ね」
クルリとドアの方に身体を向けたさんに、もう一度声をかけた。
「明日、そのリップスティック……塗って来てくれますか?」
さんは足を止め
「……わかんない。おやすみなさい」
そう一言残すと、あっさりドアを開けて出て行った。
足音が少しずつ遠くなる。
大丈夫……
しっかり植え付ける事が出来たハズだ……
真っ直ぐな彼女に……
歪んだ背徳感を……
僕はそのまま玄関の床に寝転がると……
緩む口元を抑える事が出来なかった。
to be continued...
このお話の続きは、久遠さまの
『君とならキスだけで TIGER&BUNNY』
「第21章 背徳のシナリオ~後編~」に続きます。