第1章 キスだけじゃ、我慢できない
「悪いな、バニー……」
「いえ、僕はまだ一緒にいたかったので」
「そ、そうか……」
こいつ、真面目な顔でいつも照れる事を言ってくるんだよな……
「虎徹さん……」
「ん……」
楓がいなくなると、二人で顔を寄せ合い、ずっと我慢していた唇を重ねた。
バニーの口からは、いつもはしない焼酎の匂いを感じる。
なんだか頭がボーッとしかけた時、バニーの声が響いた。
「これ……」
「え?」
「洗い物してきて下さい」
タオルをポンと渡される。
「な、、」
「当然でしょう?僕と楓ちゃんが料理を作ったんです。洗い物は虎徹さんがして下さいね」
さっきの雰囲気は、なんだったんだ……
「へーい……」
なんだか、少しショボくれた気分で席を立った。
「虎徹さん」
「あー?」
後ろから、ギュッと抱き締められた。
「これ以上、引っ付いてると止まらなくなりますから」
「お、おゥ……」
そ、そうか。たしかに、そうだよな。うん。
俺の『タイガー』も治まらなくなると困るしな。うん。うん。
俺は機嫌を直して、洗い物がたんまりある流し台へ向かった。
後ろにはボソッと呟くバニーがいた。
「アルコールが入ると、危ないですね。僕も……」