第1章 キスだけじゃ、我慢できない
バニーと二人、買い物をした後、待ち合わせの駅に行った。
暫くすると、時刻表通りにやって来た電車から、楓が降りてきた。
「あーお父さーん!間に合ったんだねー!」
「おぉ~楓~~~」
久しぶりに会う愛娘の楓を抱き締めようと、両手を広げて駆け寄った。
「きゃ~!!!バーナビーも来てくれたの~!?」
楓は、俺の腕をあっさりとすり抜け、自身の大ファンであるバニーの元へ駆け寄る。
俺は中腰で広げた腕のまま、後ろにいる二人を振り返った。
嬉しそうに話すバニーと楓……
ま、それも、いっか。
行き場のなくなった手を頭に持っていき、ボリボリと掻いた。
「今日は、僕が夕飯を作りますよ」
「えー!ほんとー!?お父さんってば、いっつもチャーハンだけなのっ!」
「えッ!?楓、お父さんの作るチャーハンが、好物じゃなかったのか!?」
思わず楓の後ろから声をかけると
チラリと目線だけを寄越して
「アレが一番食べれるだけだよ。お父さんが作るやつで」
「え~~~ッ」
「さ、行きましょうか?」
パッと腕を差し出すバニーに
「うん!」
と、腕を絡める楓!?
俺にはそんなことしてくれないのに!?
「あ!お父さん」
「な、なんだ?」
思わず嬉々とした声が出た。
「はい。これ」
どすんと渡されたのは、なかなかに重いカバン……
「えーお父さんも、楓と腕、組みたいなぁ~」
「無理」
あっ、くそッ。バニーのやつ、肩を揺らしてやがる!
ま、いっか……
またそう思い直し、俺は重いカバンを肩にかけ、二人の後ろを着いていった。