第3章 Loving you is Killing me. 前編
「そんなこと、あンの?」
「ありますよ」
「そっか……」
涙もそろそろ、治まってきた。
ずっと背中を擦ってくれていた千代紙に、お礼を言った。
「あんがとな……」
「ふふ、いいお父さんなんですね」
「最近は相手にしてもらえねーけどな」
笑いながら、千代紙がまだ俺の背中を擦っている。
もう涙は治まってきたのにな。
でも、なんか千代紙の手が温かいから……
なんとな~くそのまま
黙って受け入れていた。
「そういえば、昨日ね、嬉しかったんですよ」
「何が?」
「ほら、私のこと先輩の相棒って、重力王子が……」
「あー重力王子ね……」
「え!?今の話のポイントそこですか!?」
「えッ?違うの!?」
「違いますよ~~~」
「そ、そっか、悪ィな!ハハッ!」
「もぅッ!フフッ」
俺達の笑い声が、控え室に響く。
その間も俺の指は勝手に動く。
「なぁ、これはどーだ?」
「これ、ウサギの顔だけじゃないですか……」
「あ、やっぱダメ?」
ウサギの顔に折った千代紙を、指でつまんで、じっと見る……
バニー……か……
「先輩……」
「あ?」
「また、泣いてるんですか?」
「えッ!?ウソッ!!!」
思わず両手で顔を押さえる。
「な、なんだよッ!ちょ、ちょっと目にゴミが入っただけ……」
「えーっ?ほんと、ですかー?」
千代紙が俺の顔を覗きこんできた。
その時、
バンッ!!!
大きな音を立てて、控え室のドアが開いた!