第1章 キスだけじゃ、我慢できない
「え?今日、楓ちゃんが来るの?」
「なんか、2日程預かってくれって、連絡あってさ」
「そうなんですか……」
バニーとネイサンの三人で休憩を取ったときに、俺はさりげな~く、あくまでも、さりげな~~く、言ってみた。
「何時にこっちに来るんですか?」
「えっと、夕方には駅に到着するけど」
そんな話をしていると、腕に着けているPDAがけたたましい音を立てた。
そして、トレーニングルームのモニターにも、いつもの顔が映り声が響く。
『ボンジュール、ヒーロー!バステトストリートで強盗事件発生よ!今日も盛り上げて頂戴!』
その場にいた全員の顔が一瞬で、ヒーローの顔になる。
俺はちらっと時計を確認する。
大丈夫、まだ時間はある。
「虎徹さん。今日は僕だけで行きますよ?」
「あ?んなことさせる訳ねーだろ」
「でも、楓ちゃんが……」
「時間はまだある。それに、あいつも俺の仕事を解ってるから大丈夫だ」
バニーの肩に手を置いて、ニカッと笑ってやる。
「ふっ」
薄く笑ったバニーが俺の手を軽く握ると
「今日はさっさと片付けましょう」
「あぁ!行くぜ!」
「はい!」
すでに他のヒーロー達は、部屋を飛び出していた。