第1章 キスだけじゃ、我慢できない
「何、お尻触られてるんですか?」
「いやっ、あれは不可抗力だろ?」
「避けて下さい」
「はぁ~?あいつのは挨拶みたいなもんだろぉ?」
「……挨拶に、あんな反応しないで下さい」
「……お前」
思わずバニーにヘッドロックをかけ、抱き寄せた。
「痛いですよっ」
なんて言いながら、俺から離れない。
そう。こいつは、なかなか可愛いヤツなんだ。
俺にとって。
どこもかしこも……
「怒んなよぉ、なッ?」
「もう、いいです……」
ピッ、ピピピピ……
そう言うとバニーは素早く、俺のマシンのスイッチを押し、一番速いスピードにしやがった!
「おわッ!お前ッ!!!」
バタバタと走り、後ろに転がって倒れる俺を見て
「ほらトレーニング、足りてませんよ」
「くーーーッ」
大事な腰が使いもんにならねぇじゃねぇか!
そんな事、思っても声に出せるわけがなく、思わず涙目で睨んだ。
涼しい顔で、適度な速さで走るバニーの後ろ姿を見つめる。
くそッ。
今夜こそ、あいつを……
あ……そうだった……
大事な事、伝えてなかったな。
頭をポリと掻いて、黙って横に並んで俺も走り出した。