第2章 キスだけじゃ、止められない
「君には隠せないんだね」
「ふふ、残念ながら」
「そうか、でも大丈夫だ。私は……私の気持ちを彼に伝えるつもりはないんだよ」
「どうしてですか?」
「…………彼には、君のような…………
その……可愛らしい女性が……似合っている……と、思うからだよ」
そう言い終わると、ニコッと頬笑むキース。
ヒーロースーツを着ていないのに、爽やかな笑顔のキースを見て
「違いますよ」
千代が思わず否定の声を上げた。
「え?」
「私……こう見えても……
男なんです……」
ガタガタガタッ!!!
びっくりし過ぎたのか、キースが後ろに飛び退き、勢い余ってソファから落ちてしまった!
「大丈夫ですか!?すいません!驚かせてしまって!」
思わず手を差し出す千代。
「……す、すまない。てっきり女性だと……」
「ふふ。大丈夫ですよ。私、小柄だし。それに私の好きになる人はいつも、
男性なんで」
「君は折紙くんの事……」
「はい。直接お会いして、はっきりと気付きました」
次の言葉を待つようにして、キースが千代の顔を見つめた。
「好きです」
「……やはり」
座り込んだまま、キースが呟いた。
「今からどちらが折紙さんを、喜ばせる事ができるか……勝負してみせんか?」
「え?」
「今日はお祝いなんですよね。今季初の確保ポイントの」
「あぁ……」
「私とスカイハイさん。どちらが彼を喜ばせる事ができるか、勝負しませんか?」
千代がそう言い終わると、
差し出したままの千代の手をキースがギュッと握った。
「負けないよ。君には。キングオブヒーローの名に懸けて、負けない」
こんな子供じみた挑発に普段の彼なら乗ることはない。きっと千代の放つ、薄くて甘いフェロモンに惑わされていたのだろう……
その時、V.I.P.ルームのドアが開いた……