第21章 背徳のシナリオ ~前編~
「へーお子さんと二人暮らしですかー」
「うん、まあもう大きいからね、楽になったよ」
さんは、モグモグと箸を置くことなく、ずーーーっと
食っている。
「いやーいい食べっぷりだなぁ~!さんは!」
アントニオがさっきから、さんの私生活を根掘り葉掘り聞いている……
「美味しいねーすっごく美味しいっ!ねっ、鏑木さんっ!」
「あっ、ああ!旨いっすね!てかアントニオ、お前色々聞きすぎじゃね?」
「んだよー俺は虎徹のために……」
なんて、言いながらドスドスと肘で俺を突いてくる……だから、オメーのバカ力はイテーんだよっ!
「あ、特に何も隠してないから大丈夫!気にしないで!前のダンナはロクデナシだったけど、子供はね、ほんっといい子に育ってね~あ!ビールお代わりお願いしまーす!」
「いやー飲みっぷりも、いいっすね~!」
またアントニオが嬉しそうに声をかけている。
「美味しいお肉に、男前二人いたら、それだけでビールが進むよね~!」
「あ、俺も男前枠ですかっ!?」
……いや、テメーは胸毛枠だっ!
「もちろん!鏑木さんの周りは、格好いい人が多いんだねー!あっ!もちろん鏑木さんもねっ!」
「俺も格好いい枠なの?」
「うん!格好いいよ、だけど可愛くてーーー泣き……あ、これナイショだった!」
「いや、さん、それ皆知ってますよ、こいつがすぐ泣くの!」
「俺が弱っちいみたいに言うなっ!」
「えー強いよー格好いいよね、鏑木さん。強くて優しくて、格好いい!」
なんて言って、向かいの席から腰を浮かして俺の頭を撫でてくる。
あーーー
なんっかこの人には、敵わないな……