第21章 背徳のシナリオ ~前編~
「ここ?」
「うん!一度来てみたかったんだー」
「いいとこ知ってるって……」
「だって、いっつも見てるんだよ?ヒーローTVでっ!」
…………
おばちゃんと俺が来たのは……牛のスポンサーの
『牛角』だった……
「ほらっ、行こーよ!」
「いや、もうちょっといい店に……」
「はぁっ!?私がご馳走できるのは、ここぐらいだからっ!」
「いやいや、おばちゃんにご馳走になる気なんて、ないっすよ」
「どうゆうことよ。それで今日は来たんでしょ?私がご馳走するって言ったから、私がするのっ!!!」
「いや、それは……」
俺が言葉を濁していると……
「おっ!虎徹じゃねーかっ!って何、店の前で揉めてんだよ、恥ずかしいなお前……」
あーやっぱり来たか……アントニオ……
あいつよくここで食ってんだよな……
タダだから……
「だっ!うるさいっ!お前に関係ないだろっ」
「えっ!?女の人と!?珍しいな~」
ニヤニヤと笑いながら、俺の肩に手をかけてくるアントニオ。
「俺がご馳走してやるから、来いよ!」
「なんだよ、じゃあもっと高い店連れてけよ」
「うるさい、お前の舌にはウチで充分だっ!」
「お前それ……いくらなんでも失礼じゃねーかぁ?」
俺達がギャーギャー言ってると
「あの……私、お腹空いたんだけど……」
お腹に手をあて、ポツリとさんが呟いた。
それを見ていたアントニオが、すんげー笑顔になってさ
「ほらっ!お連れさん、腹空かしてんぞ!入れ入れっ!たくさん食べて下さいねっ!」
バシンッと、さんの背中を叩いた!
「はいっ!やったーいっぱい食べよう!鏑木さんっ!!!」
一瞬でアントニオを笑顔にしたさん。
すげーな、おまけにアントニオに背中叩かれても、笑ってるし!
あいつの力、加減してもなかなか強いんだけどな……
俺はニヤつく口もとを隠して、二人の後ろを着いて行った。