第20章 kiss the glasses 前編
「違いますよ。貴女にファンでいて欲しいなんて、言いませんよ」
「え?違うんですか?」
「はい」
すると突然、困ったような顔をするさん。
その愛らしい顔を見ていると、僕はたまらない衝動にかられ……
ギュッとさんを抱き締めた。
「あ、あのっ!?」
すっ頓狂な声を上げる、さん。
「わかりませんか?僕はどうやら、貴女にひどく惹かれているようなんです」
「ま、まさか~ははっ」
……そこで笑いますか?歳上の余裕なのかな?
「本当です」
僕は身体を離して、さんの頬を両手で挟んで目を見て言った。
「……」
「ちゃんって呼びたいなんて言ったのは、ウソです。本当は
って呼びたい。いいですか?」
「…………でも、私はただの同僚で……バーナビーさんよりも、かなり歳上で……なんの取り柄も……」
「取り柄は、斎藤さんが褒めてましたよ。随分、貴女の事を買っている。デザインのセンスがいいとか……」
「ほんとに?」
あ、凄く嬉しそうな顔だ。
僕の手に挟まれたままだけど。
「歳は気になりませんね。僕なんかよりも、ずっと可愛らしい」
「いやーそれは、ないですよ」
何故かそこは、ハッキリと否定するさん。
もちろん頬は僕に挟まれたままだ。
「他には?」
「ただの同僚……」
「大事な同僚です」
「あ、もうすぐタイガーさんが戻ってきますよ」
「大丈夫です」
「……え?」
「さっき貴女を抱き締めているときに、戻ってきたので追い払いましたから」
「えっ!?見られたんですかっ!?」
「何か問題でも?」
焦って大きな声を上げるさんに、僕はさっきよりも強く頬を挟んだ。