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君とならキスだけじゃ【TIGER&BUNNY】

第20章 kiss the glasses 前編


「貴女の手……冷たくて気持ちがいい」

「そ、そうですか……」


顔を赤くして、俯くさん。

あぁ、そう言えばよく顔を赤くして、俯いていたな……

ぼんやりと最初に会った頃を思い出す。


「大丈夫じゃないです」

思わず、ポツリと声が出た。

「え?ほんとに!?すぐにタイガーさんを呼んで……」

「呼ばなくていい」


僕はさんの手を握ったまま、身体を起こして小汚ない居酒屋の個室の畳の上に座った。


「あの……」

ずっと心配げに僕の顔を見下ろしていたさんの視線が、今度は上を向く。

「僕ももっと貴女と……話がしたい」

「あ、そ、そうですか?」

「もっと、一緒に食事も楽しみたい」

「は、はい?」

「意味……わかります?」


「……?いえ……」


「僕もさんの事を、ちゃんって呼びたい」

「ど、どうぞ?」




違う。



伝えたいのは、そんなことじゃない。




いつもは女性から僕を欲しがってくる。

言い訳だ。わかってる。

それでも僕は、自分から欲しいものを欲しいと言って、手に入れた事がない。


いつも相手が来るんだから……
僕はそれを選ぶだけだ。


でも、さんは違う。


僕の周りにいる誰とも。




そんなさんを僕だけのモノにしたい、なんて言うのは


ただの我が儘なんだろうか……


さんは、さっきから僕に手を握られたまま黙って僕の顔を見上げている。



「あの……」

さんから、声がかかった。

「はい」

「私、酔っ払って眠ったバーナビーさん見ても、ファンは止めませんよ?」

「え?」

「だから安心して下さいね」

ニッコリと頬笑むさん。







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