第20章 kiss the glasses 前編
「日本酒も美味しいでしょう?」
さんが僕の顔を覗き込んで聞いてきた。
「へ?え、えぇ……」
しまった、皆で食事に来ているのに、考え込んでいた。
「これもね、美味しいんですよ」
今度は僕に料理を勧めてくる。
「あ、頂きます」
僕がチョップステイックスで料理を摘まもうとすると、スルッと料理が逃げた。
「お箸、難しいですか?」
「そうですね、なかなか慣れませんね」
「なにっ、バニーちゃん、お箸使えないのっ?ちゃんに、あ~ん、してもらったらっ?」
酔っ払った虎徹さんが、分かりやすく絡んでくる。
「はいはい、バカな事ばかり言わないで、ねぇ?」
僕は向かいに座るさんを見た。
「え?」
さんは僕達の会話なんて聞いていなかったのか、パクパクと料理を頬張っていた。
うん。それでこそ、さんだ。
やっぱり僕は笑いが込み上げてくる。
そして、ずっと気になっていた事を聞いた。
「ねぇ、さん。さんは今も毎朝、写真の僕に話し掛けてるんですか?」
「えっ……!?」
さんの箸が止まった。
「ほら、あの日、写真の僕に挨拶をしてから、キス…………」
「ぎゃあーーーーーー!」
僕の質問は、さんの大きな声で遮られた。
「……バーナビーさんって、意地悪なんですか?」
「そんなことありませんよ」
「いや、そんなことある。あるよなっ、バニーちゃんっ!!!」
虎徹さんが僕の肩を抱いて言ってきた。
「こんなにも親切な僕に、あなた達は何て事を言うんですか?」
僕のその言葉を聞いて、虎徹さんとさんだけじゃなく、斎藤さんもお腹を抱えて笑っている。
…………もしかして