第20章 kiss the glasses 前編
それからのさんは、僕の目を見て話をしてくれるようになった。
斎藤さんの部下であるさんとは、なんだかんだと話す機会も多い。
「おろっ?バニーちゃん、ちゃんと仲良くなったの~?お互い壁があったから、心配してたんだよね~俺っ!」
「貴方に心配して貰うなんて、僕もまだまだですね……」
「ふ~ん……」
なんて、ニヤニヤと笑ってくる虎徹さん。
「なんなんですか?」
「いんや~べっつに~~~」
「手……止まってますよ」
「わ~バニーちゃん、こっわ~い」
なんて言ってパソコンに向き直る、虎徹さん。
まぁ……でも……僕よりも、虎徹さんの方がさんと話してる機会が多い……
ような気がするな。
「バニー、今夜、時間あったらまた、皆で飲みに行かない?」
「……もしかして、また、あの店ですか?」
「いやーちゃんが、お気に入りなんだよね~あの店。安いし、旨いしさ~」
ほら、やっぱり。
虎徹さんとさんは、もう約束してるんだ。
「バニーも付き合えよ~、あっ!またデート?」
「………………いえ」
そう言えば、最近、誰とも会っていないな……
なんだろう。皆、コロコロと愛らしく笑い、どんな高級な店に行っても、サラダしか食べなかったり……
何を聞いても、ありきたりな返事。
それでも、適当に楽しめた。
彼女達は僕と言うステイタスを周りに見せつけ、そしてその代わりに、僕は彼女達と楽しむ。
いわゆる、割りきった関係だ。
時々、先日の彼女のように、僕に踏み込んでこようとする女性もいるが……
僕は、それを望まない。
遊びたい訳でも、淋しい訳でもない……
でも、何か満たされない気持ちのままだったことは、
事実だった。