第20章 kiss the glasses 前編
ぐ~~~~~~………………
「…………」
「…………」
こ、この状況で……お腹の音っ!?
僕はもう笑いを押さえる事が出来なかった……
お腹を抱え、涙を流して笑う僕を見てさんは……
「バーナビーさんも、そんな風に笑うんですね?ふふふ……」
なんて一緒に笑い出したさん。
僕達はロッカールームの床に座ったまま、大声で笑いあった。
そして、ひとしきり笑った後
「あ!ここ男性用のロッカールームだった!!!」
そう言って、さんがパッと立ち上がったから、僕はさんの腕を掴んだ。
「昨日、食べそびれたドーナツがオフィスにあります。パントリー(給湯室)でコーヒーでも入れて一緒に食べましょう」
「はい……」
そう言ってさんは……
初めて僕の目を見て、笑ってくれたんだ……
二人並んで廊下を歩く。するとさんが話し掛けてきた。
「昨日、斎藤さんにここまで送って貰って、そのまま自宅に帰ろうかと思ったんですけど……その日の分析データーとか読み込んでいるうちに……」
「いつの間にか、眠ってしまったんですね?」
「はい」
「食事は?」
「ふふ、あのお昼ご飯の後は食べてなくって……バーナビーさんもじゃないですか?立て続けに出動してたから……」
「そう言えば……僕も、忘れていたな……」
「ね?集中すると食事、忘れちゃいますよね?」
「まぁ、僕の場合は取る時間がなかったのもありますが……」
「あ、そっか……ヒーローは忙しいですもんね」
他愛ない話をしていると、パントリーに着いた。
僕はパントリーでコーヒーを淹れようとするさんの手を止めた。
「僕が淹れますよ」
「……ファンサービスですか?」
「ん~……年長者を敬って……かな?」
「……ファンサービスにしといて下さい!」
また、僕達は笑いあった。
明け方の誰もいない、パントリーで。