第20章 kiss the glasses 前編
そしてまた彼女は、さんにチラリと冷たい視線を送ると、コロコロと甲高い声で話しかけてきた。
僕はテキトーに相槌を打ちながら……
モグモグと食べるさんを見ている。
口の端にソースが付いている……
思わずまた、手が伸びた。
「!!!」
「ソース……付いてましたよ」
僕は親指でそのソースを拭うと、ペロっと舐めた。
「美味しいですね」
「!!!!!!」
しまった!またさんが、固まった!!!
「バニー……今の完璧……セクハラ……」
「バーナビーって……誰にでも、優しいのね?」
チラリと彼女が睨むように見てきた。
「ええ。特にファンの方には、ね?」
「あら、貴女……バーナビーのファンなの?」
またカチンとくる言い方をしてさんを見ている彼女に
「僕はファンには親切ですよ。だから、貴女にも親切でしょう?」
「えっ……?」
ひきつった顔で僕の顔を見てくる彼女。
何度もしつこいから、こうしてたまに会ったり、夜を共にしているだけなのに。
まだ気付かないのかな?
「バニー……」
虎徹さんが僕の冷たい視線に気付いたのか、声をかけてきた。
「さんは、大切なファンの一人です。だけどもう1つある。
さんは、僕達の大切な同僚なんです」
「おいっ、バニー……」
「あ、もう休憩が終わる。行きましょう」
「え……デザート……」
「……後で買ってあげますよ。では、失礼しますね」
「あっ!すんません、じゃあ……」
「失礼します……」
最後まで丁寧な二人を無視して僕は、ウェイターに声をかけてチェックした。
「……」
もうこれで彼女から連絡はこないだろう。
……あれ?
彼女の名前……
……なんだったかな?