第20章 kiss the glasses 前編
僕はオフィスからほど近いホテルのカフェテリアを予約しておいた。
彼女はまだ来ていない。
すると虎徹さんが
「お、ちゃんはこっち座れよー」
なんて僕の向かいの席に座らせる。
当然のように僕の横には虎徹さんが座ってきた……
そして少し遅れてやってきた彼女は、遠くからでも来たことが分かる程の高級な香水を身にまとっている。
そして僕たちに気付くと、
「ごめんなさい、お待たせして……」
「いえ、大丈夫ですよ」
僕はサッと席を立って声をかけた。
だけど……座って挨拶をする虎徹さん。
「どうもっ!いやーやっぱキレイっすねーモデルさんは!なっ!ちゃんっ!」
「はい!あ、こちらにどう……」
さんが席を立とうとした……
「ほらほら早く座って!早くオーダーしようぜー!おっ!この一番高いステーキの乗ったヤツ、4つでいいよなっ!!!」
「……いえ、私はサラダだけで……」
ニコッと笑う彼女の目は……笑っていなかった。
結局、彼女は虎徹さんの正面の席、僕の斜め前に座っている。
ま、これならどの角度で写真を撮られても、二人きりにはならないから……まぁ、いいか……
そして僕は三人分のランチと、ドレッシングは別添えのサラダをオーダーした。
運ばれて来たランチは、かなりのボリュームで二日酔いの僕にかなり多い……いや、男性にでも少し多いと思われる量だった。
「うめーなっ!ちゃんっ!」
「はいっ!!!デザートもあるんですよねっ!!!」
虎徹さんとさんは、バクバクと食べている。
「いやーほんとサラダだけでいいんっすか?旨いっすよ、これっ!!!」
「えぇ……」
フルーツウォーターを飲みながら、返事をする彼女……そして、チラリとさんを見て
クスッ
と笑った……