第20章 kiss the glasses 前編
「あ、バニー、なんか鳴ってんぞ」
デスクの引き出しに入れていた、スマートフォンが振動で小さな音を立てている。
チラッと見てみると、昨日の彼女からだ。
「出なくていいの?昨日の子じゃねーの?」
虎徹さんがまた覗き見している……
「……」
僕はスマートフォンを手に取ると、オフィスから出て廊下で通話ボタンにスワイプした。
昨日の埋め合わせに、今日一緒にランチに行こうと言う電話……
正直、面倒臭い……
断ろうと思って、ずっと下向きだった視線を上げたら……
ドアの隙間から、虎徹さんとさんが二人並んでこちらを見ている……
「いいですよ、ただし同僚も一緒ですが」
気付けば……そう言っていた……
僕のその声を聞いて、二人は顔を見合わせている……
通話を切って、二人の顔を見た。
「同僚って、俺達のこと?」
「他にいますか?」
「おばちゃん?」
オフィスの中を指さしている虎徹さん……
「マスコミ対策ですよ」
「あ、そーゆーことね!いいよ、いいよ!バニーのおごりな!なっ、ちゃん」
「あの……私も……ですか?」
虎徹さんに聞いているさん。
「美味しいランチ、ご馳走しますよ」
「ハ,ハイ……」
やっぱり……
僕には声が小さいんだな……