第20章 kiss the glasses 前編
さんは、僕の目を見て話さない。
虎徹さんとは、同郷だから気が合うのか、楽しそうによく話している。
そしてお酒も……
何度も注いでは、飲み干している。
たしか、酒はアルコール度数が高かったはず。
「さん、そろそろジュースかお水、頼みましょうか?」
僕は彼女の事が少し気になったので、二人が楽しく話している間に入って声をかけた。
すると
「バニーちゃん、大丈夫!ちやん、ザルだから!」
「ザル?」
「……平気なんです。私。アルコールに強くって」
そう言って、ニコッと笑う彼女の頬は少しだけピンク色に染まっている。
「そ、そうですか……」
そう言うと彼女はまた、虎徹さんの方を向いてグラスを片手に、刺身を摘まんで食べている。
もう、僕の方は見ない。
僕のファンだったんじゃないのか?
虎徹さんと二人で話をするのが、そんなに楽しいのかな?
だったら、歓迎会なんて名目じゃなくて良かったんじゃ……
大体、歓迎会ならヒーロー事業部全体でするべきで……
なんなんだ、このモヤモヤした気持ちは。
僕はずっと何かを囁いている斎藤さんには、目もくれず……
二人を静観しながら……
安物のロゼワインを飲んでいた。