第20章 kiss the glasses 前編
「あれ?言っちゃったの?本当の年」
虎徹さんが、唖然としている僕の背中越しに、さんに声をかけている。
「は、はい」
「ちゃん、若く見えっから二十歳で通せばよかったのにー」
「いや、無理ですよ」
「僕……10代だと思っていました……」
思わず呟いた僕に、虎徹さんとさんが、顔を合わせて噴き出している。
「いや、お前、それはないわー」
「そんなに若く言われたのは、初めてですよー」
そう笑っているさんの目元は、うっすらと笑い皺がある。
……でも、化粧っ気のない顔、肩でふんわりと揃えた髪に、華奢で薄い身体つき……
僕の周りにいる大人の女性とは、何もかもが大きく違っている。
そうか……オリエンタルは、やっぱり不思議な地域なんだな。虎徹さんだって、年よりもずいぶん若く見える。
ひとしきり笑った虎徹さんが声をかけてきた。
「なぁ、今からちゃんの歓迎会しよーぜ」
「え?」
しまったな、今日は予定が……でも、まぁいいか。
僕の声を聞いたからか、さんが遠慮がちな声をあげた。
「あの、私は昨日していただいたので……」
「いえ、失礼を言ったお詫びも兼ねて、是非行きましょう」
「大丈夫なの?バニーちゃん、デート?」
「いえ、ただのgirlfriendですから」
そう言って、僕は断りのメッセージを送る。
すると虎徹さんが後ろから覗き込んできて……
「お前……この子……有名なモデルじゃねーの?」
「えぇ。先日、一緒に仕事をしたんですが……しつこくて……」
「いいの?断っちゃって」
「問題ありません」
「………………」
さんが黙ってこちらを見ていた。