第20章 kiss the glasses 前編
斎藤さんのいるラボに向かった。
前を歩く虎徹さんは、鼻歌なんか歌ってひどくご機嫌だ。
何かサプライズでもあるのか?
いや、昨日、斎藤さんと飲んだなんて言ってたから、斎藤さんと二人で何かを企んでいるのか?
あの人もよくわからない。
確かにメカニックの腕はいい。
スーツだっていつの間にか改良を加えていて、以前よりも使いやすくなっていることもよくある。
たけど、何故かふざけた機能が増えてたりもするから、彼もなかなか油断できない。
「どったの?バニーちゃん、怖い顔して」
虎徹さんが僕の眉間に指をあてて、グリグリと解している。
「止めて下さい」
「ははっ。ほら、スマーーーイル、スマイル!なっ?」
「………………」
その言葉で、僕の眉間の皺が余計深くなるとは思わないんだろうか、このおじさんは……
「ほら、もういいでしょう。行きますよ」
「バニー、そーんな怖い顔してちゃダメだぞー?」
「しつこいな……」
「ほらーーーだから、ダメだってば」
いつもにマシてしつこく絡んでくる虎徹さんに、
思わず大きな声が出た。
「しつこいって言ってるでしょ!?おじさんっ!!!」
シュンッ……
その時丁度、ラボのドアが開いた……