第20章 kiss the glasses 前編
朝のオフィス。いつもの光景。
「バニーおはよ……」
「おはようございます…………貴方、酷い顔してますよ?」
「いやー昨日、斎藤さんと飲んでてさー……」
「へぇ……」
斎藤さんと飲む……
あの小さな声……聞きづらくないのかな?
静かな店でも聞こえづらい、あの声。
少し賑やかな店だと、もう全く聞こえない。
おじさん二人が顔をくっつけて、話をしている姿を僕は想像した…………
ブルッ……
朝から寒気がした。
しまったな、気持ち悪い想像をしてしまった。
僕はデスクにあるコーヒーに手を伸ばして、気持ちを落ち着けた。
「あ、そうそう。斎藤さんに呼ばれてんだよ。行くぞバニー」
「今からですか?」
「おぅ」
何故かニヤリと笑っている虎徹さん……
こういうときの彼の顔は、凄く幼い。
何かイタズラを考えているような、ワクワクを抑えきれない顔。
まぁ、もう見慣れましたけどね。
最初はほんっといい年したおじさんが、なんって……
気味悪かったんですけどね。