第18章 Tintarella di luna 前編
「貴方は貴方の正義を通して、ヒーローをやっているんでしょう?」
「ま、そーなんっすけどねーーー」
「応援……していますよ」
心にもない事を言った
アルコールのせいだろうか
なのにワイルドタイガーはよほど嬉しかったのか、私の手をギュッと握ってきて
「ユーリさんっ!ありがとうございますっ!!!俺っ、俺っ!!!頑張りますからっ!!!」
「ま、まぁ……あまり無茶はしないで……私の仕事も増やさない程度で……」
「はいっ!ありがとうございますっ!!!」
今度は握った手を、ブンブンと大きく上下に振ってくる。
私はなんだか……居たたまれないと言うか、気恥ずかしくなり
「もう一杯、頼みましょうか?」
「はいっ!そっすね!!!」
…………
気分よくオーダーする、ワイルドタイガー。
そして、
「すんません、ちょっと……」
そう言って席を立ち、トイレに行ったようだ。
その時、テーブルに置きっぱなしにしていた
彼の携帯電話が震えた。
『BUNNY』
の文字が浮かんでいる。
私はもちろん、携帯電話には触らない。
暫くすると、着信音は途切れた。