第18章 Tintarella di luna 前編
機嫌よくトイレから戻ってきたワイルドタイガーは、着信に気付いていないようだった。
もし緊急の要件なら、PDAに連絡が入るはず。
私は着信があったことを、わざと
そう
わざとだ。
わざと彼……ワイルドタイガーに伝えなかった。
その後も、楽しそうに話ながら、酒を飲むワイルドタイガー。
そして
今、目の前には
テーブルに伏せた彼がいる。
酔っ払って眠ってしまったのだ。
私は店員を呼び、会計を済ませると
また、わざと店員に聞こえるように呟いた。
「眠ってしまったので、家まで送って行くことにしよう」
「車、呼びましょうか?」
店員が私に声をかけてくる。
「あぁ、お願いできますか?」
「はい、少しお待ち下さいね」
気のいい店員は、タクシーを呼びに電話をかけに行った。
その時、テーブルに置いたままの携帯電話がまた震えた。
もちろん『BUNNY』の文字が浮かんでいるが、暫くしてまた着信音が止んだ。
私は携帯電話を彼のパンツのポケットに押し込んだ。
その時カチャッと音を立て、彼のポケットから
キーケースが落ちた。
私はそのキーケースを拾うと、そっと自分のバッグに忍ばせた。
気のいい店員が声をかけてきた。
「タクシー来ましたよ」
「ありがとう」
私はワイルドタイガーを肩に担ぐと、そのまま店を出てタクシーに乗り込んだ。
そして運転手に告げた言葉は、ワイルドタイガーの住む……
「ブロンズステージまで……」
to be continued...
このお話しの続きは、大切なコラボ作者久遠さまの
『君とならキスだけで【TIGER&BUNNY】』
「第18章 Tintarella di luna 後編」(絶賛公開中)でお楽しみ下さい❤️