第18章 Tintarella di luna 前編
しかし……
レジェンドの話は、私が思っていたよりも
私を不快にさせた。
あの男の活躍……
あぁ……それは、別のヒーローから譲って貰った手柄ですよ
あの日は母に当たり散らして散々怒鳴りまくり、酒を煽って駆けつけていましたよ
初めて私を殴った日も、大活躍だったんですよ
私はいつの間にか、彼の話に相槌を打ちながら、心の中でそんなことばかりを考えていた。
そして、彼の最期は……
この私が………………
「ユーリさんっ!?」
「……えっ」
突然、ワイルドタイガーに大きな声で呼ばれた。
「今日は進みますね、酒!もう一杯、いっちゃいますかっ?」
「あぁ……そうですね……」
自分でも、気づかないうちにアルコールが進んでいたようだ。
ワイルドタイガーが私の横でオーダーしている。
そしてまた、屈託のない笑顔で
「ユーリさんは、酒、強いんっすね、顔色も全然変わんないんですね」
「そうですね……あまり酔った記憶は、ありませんね」
そう
酒に酔って、溺れる……
そんな簡単に酔えるなら
私の気持ちも少しは楽になれたのかも知れない……