第18章 Tintarella di luna 前編
結局その日、ワイルドタイガーは、私の前で初めて酔い潰れた。
やはり相棒のバーナビーが傍にいるから、気が緩んだのだろう。
終始ご機嫌のまま、ワイルドタイガーは電池が切れたように、パタッと眠りについてしまったのだ。
「やっぱり……管理官、すいません。虎徹さん、連れて帰りますね」
「えぇ」
「あ、ここの支払いは僕が……」
バーナビーがワイルドタイガーを肩に担ぎながら言ってきた。
「いえ、私は職業柄、ご馳走になるわけにはいかないので、申し訳ないが私の分は別で」
「そうなんですね、いつも支払いは別々なんですか?」
「そうですよ。賄賂になるといけませんので」
いつもの真面目な顔で、私は言った。
「そうですか……今日は僕も管理官の違った顔を見る事が出来て、楽しかったです」
抱き抱えたワイルドタイガーの背中を撫でながら、そう言うバーナビー。
「そうですね。私も……貴方の別の顔を見たように思います」
「…………」
二人の間に沈黙が訪れた。
「ばにぃちゃ~ん、、、」
沈黙を破ったのは、ワイルドタイガー。
さすが壊し屋の名に相応しいな。
私とバーナビーは、軽く微笑み合った。
「では、失礼します」
「おやすみなさい」
先に挨拶をした私に、バーナビーが言った言葉。
二人はこれから、同じ部屋に帰るのだろうか……
何故かそんな事が気になって仕方無かった……