第18章 Tintarella di luna 前編
「何だかすいません、虎徹さんがご迷惑をおかけして」
そう言って、小さく頭を下げてきた。
「虎徹さん、飲み過ぎじゃないですか?もう少ししたら帰りますよ」
「そんな飲んでねーしっ!ねっ、ユーリさんっ!」
………………
バーナビーは、明らかに私を敵対視している。
所謂、『女房面』と言うやつだな。
そうか……
そんな風にワイルドタイガーを見ていたのか。
先程からの態度といい、今の発言でやっと納得がいった。
それなら……
「いえ、まだ、それほど飲まれていませんよ?」
私が薄く微笑んでそう言うと
「ほらなー!お前は心配しすぎなんだよっ!」
「でもっ……」
「俺は今、ユーリさんと楽しく飲んでんのっ!ねっ、ユーリさんっ!」
これまた屈託のない笑顔……と言うか、この状況に気付かず、そう言い放つワイルドタイガーの事を感心すると言うか、呆れると言うか……
だけど、
何故だろう。
私は目の前にいる、『女房面』するバーナビーを疎ましく思っていたようで……
「そうですね、私も楽しいですよ」
私は先程から薄く微笑んだままだった。
私の返事を聞いて、バーナビーの息を飲む音が聞こえた……
どうやら、バーナビーの思いは一方通行のようで
ここで、それ以上の事が言えないのだろう。
「では僕も一緒に……」
ひきつった笑顔で、ワイルドタイガーの横を死守しているように見えた。