第18章 Tintarella di luna 前編
私はワイルドタイガーの背中を、見て考えていた。
さっきの誘い……
私は、どう返事をするつもりだったんだろう
どう返事をしたかったのだろう……
すると店に戻ってきたワイルドタイガーは、残りのコーヒーを一気に飲み干し
「おっちゃん!旨かったよ!また来っから!」
そして私の方へ視線を向けると
「事件が入っちゃいました!行ってきまっす!」
少し小さな声で、でも張り切っているようだった。
「ええ。あまり物は壊さないようにして下さい」
「だっ!それも禁句っすよ!」
「そうですか」
私は努めて冷静に返事をした。
「ユーリーさん、今度……いやっ!次っ!次に会った時は飯行きましょうねっ!!!」
「えっ……えぇ…………」
思わず歯切れの悪い返事になった。
「約束っすよ!」
ニカッ!っと眩しいくらいの笑顔を寄越す、ワイルドタイガー……
「…………」
私は、声が出なくて……
「おっちゃん!ごっそーさんっ!ユーリーさんも、またっ!!!」
バタバタと慌ただしく店を出て行く、ワイルドタイガー……
やはり私の返事は……
まだ、ハッキリとは決まっていなかった……