第18章 Tintarella di luna 前編
ほどなくして、私の目の前にコーヒーのカップが置かれた。
こんな近くでコーヒーの匂い……
せっかくの紅茶の香りが台無しじゃないか……
するとワイルドタイガーは、
「はぁ~やっぱりここの、香りが違うんっすよー」
そう言って、啜るように……
いや、違うな。
香りが鼻に抜けるように……飲んでいる。
「たまにね、ここまで来るんです。カフェの手軽なコーヒーもいいんっすけどね、ここの香りと苦味が強いコーヒー!たまんないんっすよ!」
聞いてもいないのに、ニカッと笑って話しかけてくる。
「そうですか……」
「ユーリーさんは、紅茶っすか?」
「ええ……私もここのお店の紅茶が好きなんです……」
「だって!おっちゃん!!!コーヒーも紅茶も、旨い店なんてスゲーっすねっ」
「ははっ!コテツちゃんには、かなわないなぁ~」
……嬉しそうにニコニコと、ずっと笑顔の店主。
そうか……
すごいのは、貴方なんですね。
ワイルドタイガー……
いや
Mr.鏑木……